※この記事はJLCPCBの提供でお送りします。
JLCPCBとは
(↑こちらは日本語版のログインページで、お得なクーポンも配布されています。)
JLCPCBとは、プリント基板製造などで有名な香港の企業です。
日本からでもWebページでポチポチするだけでKiCADなどで作成した基板データの製造を依頼できます。
値段もかなりお手頃で、ホビー電子工作ユーザーの間では広く利用されています。
そんなJLCPCBですが、最近「3Dプリントサービス」を始めたようです。
ということで、今回はこの3Dプリントサービスがどんなものなのかを、実際の私の発注を例に紹介しようと思います。
今回発注するデータ
私は家に3Dプリンタを持っているので、これまでに多くの3Dプリンタ用のデータを作成してきました。
今回も、JLCPCBに3Dプリントを発注するにあたり、今まで作ってきた実績のある以下の2種類のデータを使うことにしました。
- RakuChordという電子楽器の筐体
- 水切り棚の皿受け
3Dプリンタの難しいところの一つに3Dプリントに適した設計というのがありますが、今回で言うと、この難しいところは過去の自分が頑張ってくれていたので、スキップすることが出来ました。
一度データを作ってしまうと、こうやって何度も作成できるのが、手作業による加工と違い、3Dプリントなど機械加工の便利なところです。
発注について
早速発注方法です。JLCPCBのユーザ登録は済ませているものとして、Web上での中も方法を少し紹介します。
と言っても、本当にデータをアップロードするだけで、特に難しいところは無いのですが・・
Webサービスの文字も中国の会社ですが英語で記載されており特に戸惑うところはありません。
注文データの登録
まず初めに、3DプリントではおなじみのSTLファイルを、注文ページからアップロードすると次のような画面が現れます。
ここで素材と、個数と説明を書くだけです。
素材は様々な樹脂や金属から選ぶことができますが、今回は安価なSLA(Resin)を選択しました。
さらにその中にも3種類の素材がありますが、これらの違いは微妙そうなので、大きな水切り棚については、一番安い9000R Resinを選択しました。
金額はほぼ体積で決まるようで、この水切り棚は$16.49でした。(体積は送料にも響いてくるので、注意が必要です)
Product Descというところにはそれが何かを説明する箇所です。今回は「Kitchen tool」としておきました。
次にRakuChordのパーツです。水切り棚に比べて体積の小さなパーツのみなので、非常に安価です。 最も小さなネジのパーツはたったの$1.0でした。
試しに同じSLA(Resin)の中の違う素材を選択してみました。
送料について
そして、次に送料の確認です。
非常に時間がかかるが安いもの、早いが高いもの、などいろいろありますが、今回は早くて若干高いDHLを選択しました。
というのも、普段AliExpressなどで安い運送業者を使うと、本当に雑に梱包されて届いたり、届くのに1か月かかったり、破損していたりと、様々なトラブルを経験したことがあるからです。
今回の送料はDHLだと $27.63でした。 (最安だとEconomical Global Direct Lineの $9.77というのがありました)
つくるモノが大きいと送料もそれだけ大きくなるので、いくら製造コストが安くても送料で損をしてしまうケースもあるだろうなと感じました。
レビューについて
3Dプリントをやったことがある人なら、形状によっては3Dプリントが難しいことを知っているかと思います。
という事でJLCPCBでは人手による(?)レビュープロセスが存在します。登録した注文データをOrderすると、支払い前にレビュープロセスで少し待たされます。
自分の場合は翌日にはレビューが完了していました。
一部の部品に非常に薄い箇所があり、この箇所は正しく出ないかもしれない、という警告が出ましたが、今回はそのまま進めてくれ(下の図で言うYES)を選択しました。
待つ
発注してから待つこと、、6日、DHLで我が家に造形物が届きました。
自分で設計したオリジナルの造形物が6日で届くというのは、個人的には「早いな」という感覚でした。
出来栄えについて(水切り棚)
今まで家庭用(?)の積層式の3Dプリンタしか扱ってこなかった自分にとって、光造形式の出力は非常に印象的でした。
積層痕もほとんど目立たず、中身もずっしりと樹脂が詰まっており、「これ、製品では?」と思うような質感でした。
レジンは白色の物しか選べないのですが、この無骨な白色が水切り棚という台所用品ともマッチしていて、無印あたりで売っていそうな雰囲気を感じさせます。
水切り棚については、単純な形状で、とても3Dプリンタにやさしい設計となっているため、造形の不具合なども全く見つかりませんでした。
また寸法もすでに家にある3Dプリンターで作ったもので合わせてあるため、即台所で使い始めることが出来ました。
比較相手としては全く適切ではないかもしれませんが、我が家の3Dプリンター(積層式)で作ったものとの比較です。
出来栄えについて(RakuChord)
こちらも家にある積層式の3Dプリンタで出力したことのあるデータだったのですが、水切り棚と比べると複雑な形状で、薄い部分も多く、3Dプリンタ的には難易度の高い造形でした。
案の定、薄く角がとがっている部分は少し反って出力されており、やっぱりプロがやってもこういうことがあるんだな、と感じました。
まぁ私の用途では許容範囲の反りですが、やはりデータ通りに作るというのは、難しいところがあるようです。
オーバーハングの個所が一部ありましたが、家の3Dプリンタでも出力できる程度の小さなものだったこともあり、特に問題なく出力されていました。
RakuChordは3Dプリンタ製のネジで電池ボックスを固定するのですが、このネジについても、特に問題なく噛み合い、固定することが出来ました。
出来栄えについて(まとめ)
もともと3Dプリンタで出力するように考慮して設計し、実際にも出力したことがあるデータだったため、大きなトラブルなく完成しましたが、手元に3Dプリンタがない状態で設計していきなり発注するのはちょっと難しいかも、と感じました。
水切り棚のような単純な造形物であれば、それも可能ですが、RakuChordのような複雑な形状の場合は、手元で実際に何度も作りながら造形をブラッシュアップしていく必要があるため、手元の3Dプリンタが必要だと感じました。
また、RakuChordの部品の各所で反りが発生しているのを確認しました。これは3Dプリンタあるあるなので、やはりか・・という感じですが、底面で鋭角の出っ張りを作るのを極力避けるか、側面が多少反っても問題ない設計にするなど、割り切りが必要だと感じました。
細かい部分では、発注した3Dデータそのまま、というわけにはいきませんでしたが、家にある積層式3Dプリンタで出力するよりは明らかにそれっぽい造形なので、ここぞ!という時に発注するのが良いかなと感じています。
安価な素材であるSLA(Resin)は乳白色しかないので、この色が許容できない人は、利用が厳しいかもしれないと感じました。
試していないですが、これに塗装するなど、ひと手間かければこの問題は解決できそうです。
3Dプリント以外のケース外注の選択肢
平面的な造形であれば、3Dプリントではなく、PCBを基板をケースとして設計する方法もあり、こちらの方が安価です。 (いわゆる基板サンドイッチ方式、パリピデストロイヤーなどがこの方式です)
またレーザーカットなども外注できるサービスがあるので、透明なアクリル板やある程度厚みのある板をカットする場合にはこれらも選択肢に入れると、安くで作ることができるかもしれません。
実際RakuChordの部品の一部はレーザーカットを外注しており、これは3Dプリントで同じものを外注するより安いうえに、精度が良いです。
一方RakuChordの筐体や、水切り棚のように3次元的な造形や、非常に分厚い造形については3Dプリンタや自由度の高いCNCでないと作ることができません。
まぁ、何が優れている、と言うよりは、適材適所の加工方法があるという事です。
まとめ
初めての3Dプリントの発注でしたが、思っていたより安く、品質も値段の割には良かったと感じています。
Webでの発注も非常に簡単で、気軽に利用できると感じました。
ただ、やはり家に3Dプリンタがあり、手元で一度試作をしたデータを発注するのが、時間面、金銭面においては賢い選択かなと思いました。
とにかく小さな造形物であれば数千円あれば発注できるので、興味のある人は、手元のデータを発注してみて、実物を見てみると良いと思います。